【Jack-o'-Lantern】


 
 二日連ちゃんで休みのハズの休日。
目覚めたら朝と言うには遅く、かと言って昼前には早すぎるという半端な時間で。
いつも腹が減ったと起こすはずの相棒はきっちり居らず・・・。
逃げやがったと臍を噛んでも、ぶつける相手がいない場合、虚しいだけなので諦めて起き上がる。
機械的に家事全般を一人で済まして、何処へ出掛けるべきか考え始めた頃。
アパートの階段をテンポのいいリズムで上がってくる甲高い音がした。
「起きてるか〜。」
ドアを開けると同時ぐらいに神田が声を掛けてくる。
「ど・・・・。」
何処へ行ってた!と続くべき言葉は、神田の肩から垂れ下がっているモノを見た瞬間、続ける事が出来なくなって、何処かへ消えていった。
「結構重いんだよ、これ〜〜〜。」
そう言って俺の座っている畳の前に並べられたのは、どでかく、ど派手な色をした蔓付きのカボチャ。
それも3個も・・・。
「何だよこれっ!」
「カボチャ。」
「喰えるのか?」
「ん〜喰えるらしいけど、あんまり旨くないらしい。」
そんなモン意味ねーじゃねぇか!と思った事が、ありありと表情に出ていたらしく。
「喰うモンじゃないって、飾るんだよ。」
そう言って手渡されたのは、一枚のコピー用紙。
紙には“お化けカボチャの作り方”とあった。
それを読んでやっと合点がいった。
カボチャ=食べる物としてしか、頭が回っていなかったので、その激しいオレンジ色にも頓着無かったのだ。
別に全然関連はないが無宗教でお祭り事の好きな日本らしく駅前のキャラクターショップとかデパートとかの一画に飾られていた記憶があるオレンジと黒のお化けカボチャのディスプレイ。
「あれか・・・。」
知らず知らずに、声が漏れていた。
よく考えてみればもう10月も半ばで、お化けカボチャを飾る『ハロウィーン』は確か31日。
「何処で貰ってきたんだよ、それ。」
「鈴木さんちの畑。」
「は?」
「この時期に合わせて、この地区の子供会の分をまとめて作ってるらしい。」
「子供に混ざって貰ってきたのか?」
「いや、勢いで配るのと片付け手伝ったらくれた。」
「ああ、そう。」
こいつの町内での行動範囲と対人関係は聞くだけ無駄だ。
「で、どうするんだこれ?」
「作る。」
「は?」
「面白そうだったんだよ〜〜〜。目と口をな、ナイフでくり抜くだろ。で、てっぺんを丸く切って蓋にする。その場所から中身くり抜いて、出来上がったら真ん中に釘さしてロウソク立てるんだって。」
「ああ、これランタンなんだ。」
「そうそう、灯り取り。」
「出来上がったらどうするんだ?」
「玄関に置いておくだろ、そうすると商店街の中でナンバー振られて、後日投票される。そんでもって何か俺らも商品貰えるらしいぞ。」
どっと脱力。
「小学生に混じってか?」
「いや見本品みたいな扱いで、特別参加か何かだから、要は好きな物作りゃいいんじゃねえの?」
「何作る気だよ・・・。」
「内緒。」

 後日、見本品として商店街の投票所に飾られたカボチャは前面が定番通りの目とギザギザの口を持った見事な“お化けカボチャ”だったけれど。
それよりも男の子の人気を集めたのは、裏面にくり抜かれた飛行機のシルエットだった(神田はこれをファントムだと言い張っていたが)。

 そしてそれを作る為に3個有った内の2つのカボチャがほとんど破壊し尽くされた事と更にくず同然になったカボチャの勿体無さに負けて神田に紙袋いっぱいのカップケーキを持たした事なんかは、本当に「言わぬが花」である。

< END >

 ギリギリセーフ?(笑)。結局、「秋」は11月まであるという事で、10月の為に書きかけの物はお蔵入りにして・・・別話を一気上げ!!
だって、ハロウィンは10.31だけですモノね(笑)。
ではまた、来月には上がって欲しいモノだ去年からの「秋」分、トホホホ(涙)。
2003.10.29

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