【クジ引き】


 
 街にクリスマスソングが流れ出し、一番身近な商店街が赤と緑のライトのクリスマスディスプレイに彩られる12月。
既に閉じてしまったシャッターを眺めながら、神田と俺は無言で肩を並べて歩いていた。

「くあ〜〜〜〜っ、鬱陶しい!!」
突然立ち止まって、クリスマスツリーを見ていたらしい神田が口を開いたと思ったら、腕をぶんぶん振り回して暴れだした。
流石にそのままにもして置けなくて、無視して進めていた歩みを止める。
「止めろ、みっともない。
それに、『鬱陶しい』じゃなくて『羨ましい』じゃないのか?」
閉まった商店街に出した通常より大きな声はやけに大きく響いて神田の耳にも届いたようだ。
目を向けていると、図星だったようで。
暴れる事は無くなったけれど、こちらを直接見ることもせず、足元に向かってぶちぶちとまだ文句を言いながら歩いて来る。
「しょうがないだろうが、正月とクリスマスの休暇は毎度恒例で『クジ』じゃないか。」
「だって、普通当たりクジが二回連続で当たるか?」
商店街を既に通り過ぎた道で、まだ諦め切れずぶつぶつ言っている神田を見えてきた児童公園のブランコに誘った。
「正月は家族サービスしなきゃなんないだろ、お父さん達は。」
「分かってるけどさ・・・。でも何でクリスマスまでも当たるこたぁ無いだろ。」
「俺達見た神様が思ったんじゃねーの。
 何処から見ても独身で待ってる彼女が居るようにも、落そうとしている相手がいるようにも見えないってさ。」
「だからって〜〜〜みんなが休んでる時に働いてんのと、一緒に休んでるのとは気分が違うだろ。」
神田がゆるく揺らしながら座っているだけだったブランコを、立って勢いよく動かして、その勢いで言い放つ。
黙っていようかとも思ったが、こう、しつこいのでは手に余る。
手持ち無沙汰でコートのポケットに手を突っ込んだら、タバコが入りっぱなしになっているのに気付いた。
滅多には吸わないそれを、賞味期限を確認して火を点けた。
「神田。クジを引いたのはお前だろう。」
「え?聞こえねー。」
「クジを引いたのは2回とも、お前だろうと言ったんだよ。」
ピタリとブランコを揺らす事を止めて言い放つと、それに合わせるように神田も無理やり動きを止めた。
「良かったなー神さん、ファントム乗りで。」
「え?」
「お前がどつぼな当たりクジを後何回引こうが、俺は仲良く巻き添えな訳だ。」
「・・・あ。」
2ヶ所一気に引くなと止めても、平気平気と人の手を振り払った事をようやく思い出したらしい。
「たぬきばやしか水沢・・・他の誰でも良いけど、背中に積んで、飛びたいか?」
「いっ!」
意地悪く見えるだろう事をわかっていて、銜えタバコでにやりと笑ってやった。
「クリスマスはたぬきばやし。正月は水沢にでも頼み込んだら、代わってくれなくも無いよなぁ。」
見る間に神田の顔色が悪くなっていくのが、この夜中でも判別できた。
「・・・・。」
「ん?何?」
「・・・わ・悪かった!!」
「何が?」
「一緒にクリスマスも、正月もアラート勤務して下さい。」
慌てて、ブランコから降りてきたと思ったら、目の前で二つ折りになって頭下げやがった・・・。
こーゆう事をあっさりとされると敵わないと、素直に思ってしまう。
銜えてたタバコを口からはずすと、その場から立ち上がる。
「帰ろうぜ。」
頭を下げたままの旦那を放っておいて、公園から抜けようとした、その時。
焦って追い着いて来た旦那に腕を掴まれた。
逆らう気も無いので、向かい合ってぽんぽんと頭を宥めるように軽くはたくと、持っていたタバコを銜えさす。
「お前があんまり悲惨だったんで来年から、2度当たったら、クリスマスか正月か選べるようになったんだから、それで納得しろよ。」
「え!?」
「お前が真っ暗になって、膝抱えてる間に満場一致で決まったんだよ。」
「うん。」
それでも俺が言葉にしないのが不安なのか、じーっと上目遣いで待ちの体勢に入ってる大型犬が目の前に一匹。
「わかった!わかったから!!
 ちゃんとクリスマスも正月も付き合ってやる!!」
「栗ぃ〜〜〜〜。」
抱きつきそうな勢いで、腕を広げてきたので一気に逃げを打つ。
「何してんだ、馬鹿。」
「嬉しさの表現。」
「いらんわ。」
そのままの勢いで帰る道を歩き出す。
でも、絶対告げなきゃいけない一言を思い出して、神田の横に同じスピ−ドで並んだ。
「来年からクジは一人1本で勝負な。」

< END >

 短くて申し訳無い〜〜〜。でも期限には間に合ったし?(笑)。
書いてみたかったのは、タバコ交換会かな?(苦笑)。
全然『クリスマス』じゃないけれど、まーこーゆーのもアリで。上記、まったく出来上がってない人達なんで(爆)。
2003.12.25

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