【チョコ風味】


うららかな日差しが窓から差し込んでくる小春日和。
図書館帰りの俺がアパートに帰り着いてみると、珍しく神田が一人で、窓際に腰を降ろしてひなたぼっこ。
「よお。」
帰って来た俺に気付いて、手を挙げる神田に。同じく軽く手を挙げ答える。
「珍しいな一人で。何してたんだ?」
問い掛けには何故か、畳に座り直した神田のおいでおいでの手に遮られた。
「何?」
そのまま何の気無しに近付いていくと、今度は足元の畳をとんとんと叩かれる。
座れって事か?と視線で聞くとこくこくと頷く。
少々不思議な気はしたが、素直に座ってみると、いきなり後ろから被さるように抱きしめられた。
「お・・・。」
咎める声をあげる前に神田の声が被さってくる。
「あ〜〜〜幸せ〜〜〜。やっててよかった〜〜。」
あんまりの物言いに反論しようと、ぐるりと反転すると目の前には、神田の顔。
思わず、言葉に詰まると
「じゃあ、やってなかったら、座ったか?」
トドメとばかりに畳み掛けてきた。・・・確かにいくら神田相手でも、以前ならやらなかったかも知れない。
「例えば、知らない男同士で重なって座ってたら?」
「気色悪い。」
「じゃあ、今は?」
言われてみれば、状況は同じ訳で・・・。最初ならともかく、今なんか額が触れる程の向かい合わせだ。
どっと力が抜けて、そのままくたりと神田の身体に凭れ込んだ。
「あったかいだろ。」
「うん。」
窓の外には温かい日差し、日の光に温められた神田の身体からはお日様の匂い。
楽な姿勢を探して、結局、最初のように背中から神田の胸に凭れかかる。
「ポッキー喰う?」
「珍しいね、甘いモノ持ってるなんて。」
「近所のガキにプロペラ機の修理頼まれて、直したら貰った。」
ガサガサと袋から取り出す音と共に、目の前に差し出された細いチョコレート菓子。
くすりと笑うと、食べにくいのでそのまま口で、神田の手から貰う事にした。
「素直に言う事聞く栗原って最高〜〜〜。」
離す気のまったくない腕に捕らわれたまま、ポキポキと食べていく。最後の方になったので口に力を入れて、神田の手から奪い取ると食べ終えた。
「喰った?」
「うん?な・・・」
に?と問う前に、唇を塞がれる。
「チョコ味。」
嬉しそうに笑う神田に怒る気もなくなる。
「な、知ってた?今日バレンタインデーなの。」
「ばーか。誰に教わった?」
「今日会った、小学生。」
後ろに回した手で、頭を軽くはたくとそのままその手で神田の頭を引き寄せる。
もう一度相手のチョコレートの甘さと香りを確かめる為に。

< END >


 バレンタインデーにどーしても上げたかったの!!欲望!!ほら、ちょっとラブラブっぽいじゃない?
そして日記捨てた私を許して(大汗)。
2003.02.14up。







【ホワイトデー】



 その日部屋に行ってみると、栗原がPXで買い込んだと思われる小瓶が幾つも、テーブルに並んでいた。
四角い透明のパッケージに包まれた瓶の中に、水色の羽根の形のキャンディが2個ずつ入っている。それ以外は入らないぐらいの手の平サイズで、蓋には白い被せるタイプのアルミとおぼしき蓋が付いた可愛いらしいモノだ。
「なーに見入ってんだよ、返せ。」
持ち上げてしげしげと眺めていたところを、声と共に引ったくられた。
よく見るとそれを宛名の付いたパッキン付きの茶封筒に一個ずつ放り込んでいるところだった。俺の手から取り上げられた一個が最後の一つ。
「あんだそれ?」
「バレンタインのお返し。」
「へーっ。マメだね、栗さん。」
「まぁね。折角基地宛までして、送って来てくれたんだから、一応返しておこうと思ってね。」
「あ〜そーですか、低年齢層にもてる男は辛いね。」
「誰からも貰えなかった旦那はひがみっぽくていけないね。」
そんな事を行っていると、外からノックの音がして、ガラガラと段ボールを乗せた台車が押されてきた。
「栗原二尉〜。14日付で、郵便受付に持って行く分有りますかー。」
箱の中身を見たら、なんとその中に入っていたのは全て郵送物。
どうも全てバレンタインのお返しらしかった。
「有るよ、持って行ってくれ。」
「結構ありますね。」
「可愛いファンが多いのよ。」
「どーしたんだ、こんな事去年までやって無かったのに。」
不思議に思った俺が聞いてみた。
「自分の分のついでにと、やりだしたら妙に多くなっちゃってですね。勢いついでに台車借りて、部屋回ってるんですよ。」
そう言って栗原の分の荷物を受け取ると、さっさと出ていった。
「ありか?」
「何?」
「俺には聞きもしなかったぞ!!」
「あ〜・・・まーねー。でもあの状況で自分もあったら、呼び止めると思ってんじゃないの?」
あっさり流されて、絡みようがない・・・。その挙げ句、栗と来たら人を見捨てて読書ときたモンだ。
「栗ちゃん!可哀想な俺にチョコレート〜〜〜〜〜。」
椅子に座った状態の栗原にしがみつく。ついでに悔しさの余り首を締め上げてみたりして。
「ギ、ギブ。ギブ。」
バンバン机を叩かれて、緩めてやると引き出しを開けて、のど飴を一袋握らされた。
「これやるから、退屈なら走ってこい!
 チョコレートは来年から鷹子ちゃんとかに頼め!!」
そう言って、部屋から追い出された俺にトドメの一言は。
「神田、チョコレートはバレンタイン!ホワイトデーは、他のお菓子を渡すモンだ。」

「そーんな仕打ちを俺にしたの覚えてる?」
 仕舞うべきか、仕舞わないべきか考え中のコタツに、二人して足突っ込んだまんま、二人で暮らす前の思い出話。
やはり栗と来たら、いつの間にか買い込んできた淡い空色の袋に薄いリボンと花で口を縮めて止めてある可愛いキャンディらしきモノを、今年も宛名書き済みの茶封筒に入れているんだけど。
そんな光景を見ていて、思い出したとも言う。
 栗原は覚えているのかいないのか、曖昧に笑って見せた。
まあそりゃ、その頃の友人に対する態度とすれば当然だっただろうけど。今は見事にあの頃とは立場が違っている訳だし、甘い言葉の一つや二つ、欲しくなって何が悪い。
「なぁ、栗ぃ〜。俺の分は?」
「貰ってないのに、返すモンあるのか?」
「ポッキーやったじゃん。」
「あれ一本でか?」
紙袋に封筒をまとめて入れて、お茶を入れる為に立ち上がったらしい。“いるか?”と身振りで聞いてきたので、頷く事で答える。
そのまま、お茶と一緒にのど飴を出して来た。
「もしかして・・・・。」
「あ〜ん。」
有無を言わせず、口の中にのど飴を放り込まれる。
「うまい?」
「これが、もしかしてお返し?」
おそるおそる聞いてみるとニッコリと笑顔。
「うまい?」
もう一度繰り返された問いに逆らう根性もなくなって答えた。
「・・・薬臭くは無い。」
普通ののど飴だと薬臭いと文句を言っていた事を覚えていたらしいチョイスだった。もう、このまま誤魔化される事がほぼ確定したと諦めた、その時。
「子供用だよ。」
そう言って、栗から唇を重ねてきた。
しばらくして離れた栗の舌の上には、俺の口に放り込まれていた飴が少し小さくなって乗っていた。それを目で確認したら、ニッと笑って噛み砕かれた。
「気に入った?」
「気に入った!」
そう言ってコタツの上に置いてあるのど飴を一つ、リベンジの為に栗の口の中に放り込んだ。

< END >


 ホワイトデー当日に出来上がったのは・・・のど飴持って走りに行かされる神田さんまででした。
余りに余りなので、後日付け足しアップ。これで少しは救われた?って事で、許して。
2003.3.15up。

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