【告白】


 
 日も暮れようとしている夕方に、食事の用意でもするかと立ち上がる。
時間を見てみると既に6時も近くなっていて、日も長くなったもんだと一人語散る。
そしてハタと思いつく、このぐらいの時間だったら帰って来て部屋の中で「腹減った」と、自分に纏わり付いてくる男のいない事に・・・。
けれど、二十歳もとうに超えた男を探しに出るのもバカらしく。
最初に思いついた通り、そのまま食事の支度をする事にした。

 それからしばらくして、とっぷりと日も暮れきった頃。
響く筈の鉄製の階段を音を消して上ってきた人影に気付く。
それもウチのドアの横に張り付いて、こちらの様子を伺っているみたいだけど、その様は台所に立っている自分には丸わかりで。
いつまでもぐずぐず入ってこないそいつに業を煮やしたのは自分の方で。
「いつまでそんな事してる気だ、ばかっ!」
台所の小窓を開けて睨みつけた。
「あ〜〜やっぱり気付いてた?」
そう言った男は明らかにほっとした顔で、見つけられる事を待っていた風だった。
「今日は何して帰って来たんだ。」
支度の出来上がった夕飯は横に避けといて、コタツの上に入れたばかりのお茶を置いてやる。
今までの行動パターンで、日が暮れるまで帰ってこない上に家に帰りたがら無い理由とい言えば・・・。
どこかで大失敗をして、俺に怒られるのが嫌なのでウロウロしていている内に日が暮れて。
しかし、他に行く所も無くいので帰るしかなくなって帰って来たと言うのがほとんどだったので、切り口上で言い放った。
「今回は、何処で、何を、やって来た。」
じっと見ていると諦めたのか、
「小学校の体育館の、仕切りのネットによじ登ってて、ネットが千切れた。」
「ま・マジで?」
聞いた途端に口が開いた。
良く聞いて見ると小学校の備品でどちらが遊ぶかと言う話で、男の子と女の子で言い争いになって、どちらも引き下がれず、体育館のネットを先によじ登った方が勝ちになるという訳のわからない競争をやって。
女の子が上がり切ったは良いが降りれなくなったそうで・・・。
その騒ぎを見ていた子供の中の一人が先生に言ったら叱られるからと、いつも遊んでくれる神田に白羽の矢を立てたらしい。
「で、無事に助けられたのか?」
「そこまで高いはしごも在るわけ無くってさ。
 よじ登って女の子の身体を抱え込んだら俺と女の子の重みにネットが耐えられなかったらしくて、真ん中あたりに見事に縦に裂いたような跡付けたまま着地しちまって・・・。」
「でもそれだけの騒ぎになったら・・・。」
「そう、気付いたらすげー人数集まってるわ。先生にも結局バレて・・・。説教喰って帰って来たんだ。」
「まぁ、けが人も出なかったんだろ?なら良かったな。」
にこっと笑ってやって、きちんとした正座から胡坐に座り直したのに、神田が足を崩さないのを不思議に思って見ていると、俺の両手を自分の手で包むように握ってきた。
「・・・何?・・・。」
嫌そうに眉を顰めると
「生きてて良かった!!」
「は?」
「ネットバリバリ言わせながら落ちたとき流石に死んだ〜〜と思ったんだよ〜〜〜。」
「勝手に死ぬなよ・・・。」
「いや、でも後ろにバランス崩してたらヤバかったらしい。」
「巻き込まれんなよ、そんな騒ぎに。お前死んだら俺誰と組むんだよ。」
それを聞いて、神田の目が点になっている。
「俺死んだら、誰かと組むの?」
「当然。」
「組むの拒否とか?」
「しないな、きっと。」
「・・・・・・・。」
ものすご〜く凹んで来たらしい神田の身体を引き寄せて抱え込む。俺よりも少し高い体温が心地良い。
そうして置いて、耳元で囁いてやる。
こいつにはこうゆう言い方が一番効き目があることも、長年の付き合いで知っている。
「お前が死ななきゃ良いんだろ?俺を誰かに渡したいのか?」
「ヤだっ!」
素直な反応が愛おしくて回された腕に身体全部を預けて仕舞う。
「一人であんまりウロウロしない事。死にそうになったら、俺を思い出せよ。」
こくこくと頷く額に軽く口付ける。
晩飯は当分お預けだ。
< END >

 私は何処に行く気なんだ・・・(汗)。まぁ、日常って事で。
しかしここだけ読んだら栗×神に読めない事も無い?(笑)。私は別に良いんですがね(邪笑)。考えない方が良いですかね。じゃ、また次の『3月モノ』で(これは遅刻した2月の『告白強化月間モノ』でした)。
2004.3.7







【桜】


 
季節外れに風邪をひいた。
何だかゾクゾクすると思って、長風呂した頃には既に手遅れだったらしい。
目覚めた時には身体がだるく・・・、折角の休みだと言うのにと勿体無さがる神田を尻目に、動くことも出来無い有様で・・・。
神田の用意した朝食を食べ、薬を飲まされる。
その他いろいろの雑事を全て神田に任せると俺の世話を焼くだけ焼いて。
「寝てろ。」
と人を布団の中に放り込むと、人を置いて何処かへ行ってしまった・・・。

 神田が行ってしまったドアを眺めたまま、ぼんやりと薬の効いてくる事を待つ。
熱のせいで気弱くなっているのか、取り残されたと言う感が拭えない。
身体が弱ってくると人恋しくなる。
昔、母に良く似た人を守りたいと思った事をぼんやりと思い出す。
あの時は寝込んでいた人を看病したのだったのか。
寂しさを守る事で無くそうとした幼かった恋・・・。
けれど彼女は自分よりもずいぶん大人で、
「愛すると言う事は寂しさを重ね合わせる事ではないの・・・。」
泣く自分の頬に手を添えて、優しく言ってくれた人。
寒かった自分を抱いて温めてくれた女。
「自然に愛せる人を見つけましょうね・・・。」
そう言って去っていった人。
余りにも幼くて、自分さえ無理をすれば何とかなると思い込んだ、そしてそれこそが彼女を傷つける事だったのに。

 ふと、頬を撫でる手の感触で覚醒する。
目の前には神田の顔があった。
「・・・ん・だ・・・?」
「なんの夢見てたんだ?泣いてたぞ。」
言われてやっと、今までの思い出が夢の中の事だったと気付く・・・。
「薬で寝て、悪い夢でも見たか?」
柔らかく、わざとおどけた様に聞いてくる神田の優しさにまた、泣きたくなる。
「昔のことを思い出してた・・・。」
甘えたい気持ちが、傍にある神田の温みを求めて擦り寄っていくと、その様子に気付いた神田が、触れ易いように布団の横に脇に寝そべってくれた。
距離が近付いた分だけ、安心していると囁くように言葉を掛けられる。
「誰だって若かった頃はあるさ。失敗もな。」
神田にも思い当たることがあるのか、苦い顔で笑ってみせる。
「・・・彼女は今、幸せかな?」
「思い返してくれるお前みたいな奴がいるって事が大事じゃないのか?」
「そうなら良いな・・・。」
そこまで言って、初めて神田から目を外して見たら・・・神田の背後に薄桃色の靄が掛かっていることに気が付いた。
よく目を凝らして見ると、それは子供の腕ぐらいの太さがある桜の枝で・・・それもその一番太い枝には思い切りよく枝が付いていて、更にその枝々に蕾がぎっしりと付いていた。
慌てて起き上がって聞いてしまう。
「どうしたんだ・・・これ?」
「ん〜、今日『花見』に行くはずだった所の桜ー。」
神田に嬉しそうに言われて、挫けそうになる・・・。
「何処から・・・、一体・・・、いや、まだ季節が早いだろう・・・。」
何がしら言おうとするのだけれど、うまく言葉が出てこない・・・。
辛うじて出て来たのは余りにも普通の問い。
「『彼岸桜』って言って普通の桜より早めに咲くんだってよ。」
「折ってきたのか・・・?」
恐る恐る一番聞きたかった事を聞いて見たら、
「貰って来た、ノコギリもそこで借りたから切り口きれいだろ。」
言外にちゃんと断ってきた事を匂わせている所が俺の怒るポイントを良く知っていると言わざるを得ない。
そう促されるままに見た先に、見事に切られた桜の枝が新聞紙を引いた洗面器の中に漬け込まれているのを見る事になった。
それも、その長さのある枝をどうやって支えているのかと思ったら、カーテンをまとめるフックに紐でバランスをとって括り付けられていた。
了承した方もまさかここまで思い切り良く、ぶった切られるとは思いもしなかっただろう。
大体、カーテンを引く時間になったらどうする気だったのか?とも思いつつ神田の顔を見ているうちに疑問が浮かんだ。
そう言えばなんで神田だったんだろう?としみじみと神田の顔を見返して見ても答えが在る訳じゃなく。
見た事によって何かを察した神田がまたジリジリと近寄って来る。
その身体に腕を巻きつけ、引き寄せ、告げる。
「愛した分だけ愛されたいと望む、性質の悪い男かも知れないぞ俺は。」
「・・・愛せば良い、お前が音を上げるほど愛してやるから。」
どうもそういうタイプらしい俺は・・・と呟くように漏れて来る神田の声に頬を緩ませる。
愛したがりのお前と愛されたがりの俺は良いバランスなのかも知れない。
抱きしめ返してくる腕に安心している身体を預けて、自然に愛せる相手を見つけられたであろう自分を褒めてやる気になる。
案外これが答えかもな・・・と何かを意図して触れて来ている神田の手を叩き落すことを止めて、黙って目を閉じた。

< END >

 毎度遅刻の3月分〜(汗)。現在リハビリ中ですかね、私・・・こんな感じでした?(見に来てる人に聞くなっつうの・汗)。
一番書きやすい人達から入りました〜(笑)。ここはやっぱりこの程度で(もーバレてるでしょうから色々・汗)。
これ以上は何かやっぱり良心が咎める(あったのか?そんなモノとか言うな・涙)。
2004.04.10

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