【痕跡】


 
「何、やってんだよ〜栗ぃ〜。」
いつまで経ってもロッカーから出てこない栗原二尉に痺れを切らして、神田二尉が迎えに行っている。
逆なら良くあることだけど、こう言うのは今まで見たことが無い。
「く〜り〜ちゃん。」
話し掛けているのが丸分かりだ・・・ドアを開けっ放しにしてるからだろう。
取り敢えず、通行の邪魔になる事もあり、ドアを閉めてあげようとロッカーに近付いて行った。
「煩いな・・・。神田、俺のサングラス知んねぇ?」
「へ?無いの?」
近付いて行くと徐々に声も近くなる。
「無いの。」
溜息交じりに告げられた・・・その言葉に反応して、つい足早になる。
「栗原さん、サングラス無いんですか?」
ドアから顔を出すと一緒に声を掛ける。
「お、水沢か!」
そう言って振り返った栗原さんは、マスクの痕跡も生々しくサングラス無しの顔でにっと笑った。

なんだかその瞬間、目の前がキラキラと言うかチカチカしたのは何だったんだろう?
「そうなんだよ・・・俺のロッカーの中は全部探したんだけどな・・・。」
「じゃ、神田さんのロッカー漁ってみたらどうですか?」
いつの間にか後ろには西川さんが立っていた。
「え・・・・。」
そう言われたと思ったら、神田さんがいきなり自分のロッカーに被さるように立ち塞がった。
「やだ!」
「やだじゃないだろ神田!!俺はサングラスがいるんだってーの。」
「そうですよ、神田さん。栗原さんがこのままで外に行っても良いんですか?」
西川さんの言い方に妙な引っ掛かりを感じつつも、ロッカーに張り付いた神田さんがしぶしぶその場所から移動したことに気を取られる。
「開けろ。
 何が雪崩落ちて来ても今日だけは文句言わないから、あ・け・ろ!」
退いた神田さんに向かって栗原さんがビシッと指を指した。
素直にロッカーを開いたその場所に、僕達が見たものは・・・。
衣類を吊るすはずの縦長のロッカーの下から半分以上が、雪崩落ちる事が出来ないほど何か訳の分からない放り込んだもので、使用不能になっている・・・なんとも悲惨な状況だった。
「神田・・・。」
栗原さんのこめかみがひくついているのが、遠目からでもはっきりと見て取れた。
「捜せ!この中から!!見つけるまで出て来んな、このバカ!!」
言い捨てて、立ち去ろうとした栗原さんを西川さんが止めに掛かった。
「いや、ちょっと待ちましょう!栗原さん。」
神田さんのロッカーの中身が気になって近付いて来ていた、元々ロッカーに残っていたメンバーも栗原さんが激高しだしたことに気付いて、我が身可愛さか、蜘蛛の子散らしたようにこの場所を後にする。
「栗原さん!!止めてくださいよ!お願いしますから。」
あまりの西川さんの必死の言葉に流石の栗原さんも鼻白んでいる。
「そんなに止めなきゃいけないような顔か?」
不思議そうに聞く意見は僕としても同意見だったけれど。
「え〜〜〜あ〜〜〜〜。栗原さんの素顔ってだけで結構インパクトあるんですよ。
 俺達はいいですけど、物見遊山にやって来る他の部隊の奴らとかに写真とか撮られたらどうする気なんです!!」
言われてみれば、栗原さんには結構な数の隠れファンがいるらしいのだ。
「そんなに酷いか?」
「ええ、そりゃあ、もう一種の暴力的に!!!」
一瞬、考えたようだが・・・諦めたように息を一息吐くと言ってくれた。
「分かった。ここにいる。」
ヤケクソ気味に近くにあったパイプ椅子を引き寄せると、ドカッと音が響きそうなイキオイで椅子に腰掛けた。
「おら、神田。出てくるまで見ててやるからちゃっちゃと探せ。」
「怒んないって言った癖に〜〜〜。」
「中身については怒ってないだろうが!!サングラスが出てくるのがいつになるか分かんないので疲れたんだよ!」
「じゃ、まぁ私達はこれで。」
「おう。」
後ろも振り返らず手で合図をする栗原さんと必死で詰まったものを引っ張り出している神田さんを置いてロッカー室の扉を閉める。
「良いんですか?あのまま放っといて。」
「二人いるんだから何とかするだろ。」
「でも、そんなに騒ぐほどの事ですか?栗原さんの素顔って?」
「あの顔見てなんとも無かったのか、お前?」
「へ?あ・・・そう言えば、見た瞬間。目の前がチカチカとかキラキラはしましたよ。
 栗原さんのあ〜ゆ〜顔珍しいからでしょうね。」
言った途端にぐっと力を込めて、西川さんに両肩を押さえられる。
「水沢〜〜〜〜!お前はそのままで居ろなっ!!」
「???・・・はい・・・。」
なんとなくよく分からないけれど、西川さんがそこまで力説すると言う事はそれなりに大変な事なんだろうと納得した。
それから20分以上の時間・・・騒ぎを知っていたメンバーが口伝えをした為か・・・栗原さんが出て来るまで、誰もロッカーに近付かなかったのであった。

< END >

 全ては無頼さんの置いて行ったイラストが悪かったって事で(他人に罪を擦り付けない様に)。
視覚的に来ちゃったんですもん!!
2〜3時間マスク跡は無くならないそうで・・・色っぽくありません?私の頭が腐ってるだけですか?(涙)。
でもココまで書いていたけれど、それだけだったんですね。
この後を追加してしまったのは、悪い癖って事で(苦笑)。
2004.09.12







【ロッカーの中】


 
「あ〜〜〜〜も〜〜〜鬱陶しいっっ!!」
目の前で何かが切れたであろう神田が、ズボッと音がしそうな勢いで自分のロッカーに頭を突っ込んだ。
そのまま見ていると闇雲に上に乗っていた衣類と雑誌などを、土を掘るモグラよろしく掻き出し始めたのに、焦る。
「おい・・・、物がサングラスなんだぞ、壊れたらどうする!」
「だって・・・。」
神田が言葉を継ごうとした、その瞬間。
握ったまんまの今日着て来たであろう、カッターシャツから俺のサングラスが滑り落ちた。
「あっっ、た〜〜〜〜〜〜っぁ!」
「黙れ。バカやろ。」
落ちたサングラスに頬摺りせんばかりの神田のおデコをぺちっとはたいてやると、視線がカチリと合わさる。
いきなりその手を掴まれたと思うと強く引かれた。
「な・・・?」
にと続く筈の言葉は、そのまま神田の口の中に吸い込まれる。
「んんっ!!」
残った腕を振り回し抵抗しても、こうと決めた男の神田の行動力は圧倒的で、一気に俺の身体をパイプ椅子から床に下ろすと膝の中に抱え込まれた。
それでも何とか神田の腕から逃れようと暴れては見たけれど、弱い首の後ろを宥めるように触れられ、いやって程唇を貪られ、暴れた事で逆に力尽きた頃、やっと唇が離れた・・・。
反論も出なくなって、力の抜けた身体を神田に支えられ、何をするのかとぼんやり見ていたらおもむろに目の下をなどるように舌を這わせられた。

そこの在るであろうマスクの痕跡を思い出して、視線を神田に合わす。
瞬間、神田の顔が赤く染まり、決まり悪そうに呟いた。
「・・・その顔、反則。」
「元々だ、バカ・・・。」
「あ〜〜〜〜〜〜も〜〜〜〜〜〜今すぐ帰りてぇ〜〜〜〜!!!」
「無理。」
力の入らない身体を神田に凭せ掛けたまま、言ってやったら支えてる神田の身体の方が思いっきり脱力しやがった。
力が抜けて、潰れたようになった背中に口を寄せて、ヒソッと囁いてやる。
「・・・帰ったらな。」
存外、俺も神田にゃ甘い。
「帰ったら?」
キッチリ聞き取った神田の身体が、見る間に力を取り戻したと思ったら、眼をキラキラさせて聞いてきた。
逆らうのもバカらしくて、一つ頷くと、サングラスが神田の手で掛けられる。
それを目を閉じて受けながら、身体がこれ以上追い詰められる前に逃げを打つ。
「じゃ、お前そのロッカー完璧に片付けろ。
 見事終わったら、一緒に帰ってやろう。」
眼を開けたそこには、肩の力が抜けたゴリラが一匹。
「早く帰りたいんだろう?」
追い討ちのように言ってやると、ヤケクソで腹を決めたらしい。
いつ片付くか謎なロッカーの中身を考えながら、不穏な空気に満ちたロッカー室から、とっとと逃げ出す事にしたのだった。
神田の地道な努力が実を結ぶか、もしくは西川ちゃん達に泣きついて何とかしてもらうかは、神のみぞ知ると言う事実と言う事で。

< END >

 何故か[痕跡]の続編。それもラヴラヴな感じの・・・(しかし、上げた時の反応は凄かったぞ・笑)。
その上、更にこれに合わせて無頼様から絵を頂き、踊った(苦笑)。
そう、痕跡の絵をいて見て一番最初に思いついたものはこの場面でした(白状・汗)。どうせ病んでるわよ〜〜〜。みんなも好きそうだから良いか(笑)。
2004.09.16

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